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「できる人は、売上ではなく粗利益を重視する」
前回の記事で、以下を解説しました。
●粗利益こそが
ビジネスのあらゆる問題を解決してくれるということ
●粗利益を増やすために、
むやみに売上を増やす努力をすると
粗利益を減らしてしまうこと
この記事では、
「なぜ売上を増やそうとすると
粗利益を減らしてしまうのか。」
について解説します。
給料や役員報酬、家賃やその他経費は、
粗利益から支払います。
その粗利益を捻出する手段が売上です。
そのため、粗利益を増やすために
売上を上げる方向に走ってしまうケースが
とても多く見られます。
そして、
売上を追いかけてしまった経営者は
必ず落とし穴にはまってしまいます。
以下が
誰もが知っている
代表的な落とし穴です。
——————
<落とし穴その1>
値引き
<落とし穴その2>
原価の押し上げ
——————
1つ目の落とし穴は、
【値引き】です。
これが、
「粗利益が減る理由:その1」です。
売上を上げるために
多くの人が安易にやってしまうのが、
値引きです。
安易な値引きは
ぜったい失敗に終わります。
値引きをしても売上は思い通りにあがることはなく、
大切な粗利益を減らしてしまうことになります。
どのように粗利益を減らしてしまうのかを、
ここから具体的に説明していきましょう。
(例)
あなたは、
ラーメン店を営んでいます。
1杯800円のラーメンを販売しています。
粗利益率は70%(粗利益560円、原価240円)です。
1日50杯売れているので
以下の数字になります。
(1日の数字)
売上=800円×50杯=40,000円
原価=240円×50杯=12,000円
粗利=560円×50杯=28,000円
あなたは、
従業員の待遇をもっと良くするために
給料を上げてやりたいと思っています。
そのためには、粗利益を増やさなければ、
それを叶えることはできません。
(※給料は粗利益から支払いますから)
粗利益を増やすためには、
もっと売上を上げなければならない、
売上げをもっと上げるためには
客数を増やす必要がある、と考えます。
そこであなたは思い切って、
20%OFFの値引きキャンペーンをすることにしました。
通常より20%値段を安くすることで、
来店客数を増加させて売上をアップして、
その結果、
粗利益を増加させるという狙いです。
売値800円×80%=1杯640円
粗利益400円、原価240円です
(※原価は同じままです)
さあ、準備は整いました。
ラーメンを1杯640円で販売して、
売上げアップを狙います!
さて、ここでみなさんも
一緒に考えてみてください。
あなたの目標は、
客数を増やして、
粗利益の総額を増やすことです。
キャンペーンで値引きをスタートしましたが、
まず最低でも、
値引き前と同額の1日28000円の粗利益は
絶対に稼ぎたいですよね。
1日あたり28000円以上の粗利がとれないのであれば、
この値引きキャンペーンは失敗です。
ここで問題です。
最低達成ラインの28000円の粗利益を稼ぐためには、
値引き前の50杯に対して、
値引き後には何杯を売る必要があるでしょうか?
↓
↓
↓
答えは、「70杯」です。
値引き前の50杯に対して
1.4倍の70杯を売ってはじめて
同じ粗利益を稼ぐことができます。
(粗利益560円÷粗利益400円=1.4)
(値引き前)
売上:1杯800円×50杯=40000円
粗利:1杯560円×50杯=28000円
(値引き後)
売上:1杯640円×70杯=44800円
粗利:1杯400円×70杯=28000円
さて、この値引きキャンペーンについて、
みなさんはどのような結果が予想できるでしょうか。
値引きキャンペーンの結果はこうなります
大失敗に終わります。
20%引きしたからといって、
いつもの1.4倍ものラーメンが、連日売れるでしょうか。
1.4倍は売れません。
かなり高い確率で売れません。
もし仮に売れたとしても、
1.4倍売れてはじめて
値引き前と同額の粗利益を稼げるという状態です。
これ以上の粗利益を稼ぐためには、
さらに1.4倍以上売らなければなりません。
1.4倍売れない場合、
例えば1.3倍売れたとしても、
キャンペーン前よりも粗利益が減ることになるので、
売上を取りに行った結果損をすることなります。
↓
(値引き後1.3倍売れた場合)
売上:1杯640円×65杯=44800円
粗利:1杯400円×65杯=26000円
(値引き前)
売上:1杯800円×50杯=40000円
粗利:1杯560円×50杯=28000円
値引きなどせず
いつものように売っていたほうが良かったと
後悔することになります。
売上が1.4倍になっても
粗利益は値引き前とトントンで、
売上が1.3倍なら
粗利益は値引き前よりマイナスになってします。
しかも、
ダメージはこれだけではありません。
値引きをしてしまったせいで、
いくつもの悲劇を招いてしまうことになります。
それは、
1、余計な経費まで使ってしまう
値引きキャンペーンを告知するために、
チラシを作って、印刷して、ポスティングして、
そのための人件費など余計なコストをかけてしまいます。
2、ロスが発生する
値引き後の客数増加を見越して
食材を多めに発注していますから、
見込んでいた客数が来店しなければ
その分廃棄ロスになり、
粗利益をさらに失うことになります。
3、従業員が疲弊する
仮に1.3倍ものお客さんが来店した場合、
いつもの1.3倍ものラーメンを作って、
1.3倍もの皿洗いなど作業をしなければなりません。
社員の作業負担が増えて体力的にきつくなったにもかかわらず、
待遇が変わらないのであれば、
社員定着率は確実に下がることになります。
大事な社員が離職したらオペレーションがまわらなくなり、
店の営業さえもままならない状態にもなりかねません。
募集を出してもこのご時世すぐに補充できるとは考えにくいです。
これが一番の悲劇かもしれません。
4、客離れが起こる
仮に1.3倍ものお客さんが来店した場合、
いつもより店内が混雑することになります。
それまでの大切なリピーターさんがそれに不快感を感じて、
離れていってしまいます。
どうでしょうか。
こんなに多くのデメリットが予想できます。
無知な経営判断というのは、
本当に残酷なものです。
これを見ると値引きキャンペーンは
気軽にやるもんじゃないなと思いますよね。
大手企業でも
キャンペーンをやっているところを
よく目にしますが、
彼らはこういうことを
必ず考慮したうえで、
メリット・デメリットを計算してやっています。
みなさんも値引きを実行する際は、
その目的とリスクを計算したうえで、
しっかりとした準備をおすすめします。
安易な値下げは、
いいことは一つもありませんよね。
以上が、
「売上を増やそうとすると、粗利益が減る理由 その1」
でした。
「売上を増やそうとすると、粗利益が減る理由 その2」
については、
次回の記事で解説します。
では、今日はこのへんで。
ごきげんよう。